02 September 2016

利子率ゼロの世界で、租税法を教える

5月16日号のTax Notesに出たこの記事は、利子率がほぼゼロの世界で(いまの日本はマイナス金利)、実現原則をはじめとする租税法のドクトリンに影響が及ぶことを指摘。タイミングよりも税率格差のほうが問題になるとか、キャピタルゲイン優遇税率の根拠が乏しくなることとか。

大事な指摘だし、個人的には、秋からはじまる所得税の授業方針にもモロにかかわる。でも、歴史的にみてリスクフリーの利子率がそれほど大きくないことはBankman and Griffith (1992)がすでに指摘していたし、はて、どこが新しいのかなあ、と感じていた。

ところが、この感じ方はあさはかだった。同じ著者が新しくポストした「法とマクロ経済―The Law and Economics of Recessions」によると、構想にはなかなか遠大なものがあって、深刻な景気後退期における法の役割は通常の経済状態におけるそれと異なるという主張を伴っている。かなり基本的なスタンスの問題だ。