08 October 2016

東京地判平成27・9・29(神鋼商事事件-受贈益)

この判決。次の事案において受贈益の課税を肯定。
  • 平成19年3月、タイ関連会社の新株引受け。
  • 他の株主が新株予約権を行使せず、持株割合が29%から97%に上昇。
  • 純資産価額で一株あたり3万2461バーツの新株を取得し、額面の25%たる250バーツを払い込み。
  • 差額を受贈益とする更正処分。
なぜこういう取引をしたのだろうか?判決文からは、タイの外資規制緩和があったことがわかる。いわく、
平成12年から、タイ人及びタイ法人以外の企業が発行済株式の50%以上を保有している企業であっても、資本金を一定額以上とすれば、参入できる業種が制限されないこととなった
とのこと。増資し、支配権を確立するというビジネス上の理由があったことがうかがわれる。関連して、ジェトロのこのサイト

わからないのは、 どうして具体的にこの手法をとったか。株式価値と払込金額の差額がこれだけ大きいと、受贈益の認定リスクはあった(いうまでもないが、払い込まれた金額が資本等取引として損益計算から外れるというのはあくまで新株を発行する会社側の話であり、法人株主たる親会社側についてはもろに損益計算の話になる。金子宏ほか『ケースブック租税法第4版』458頁)。このリスクを避けるために、プランニングの可能性はなかったか?すぐに思いつくだけでも、たとえば・・・
  • 新株の価値を推計したうえで、それに見合った金額を払い込み、しかるのち、配当や貸付金といった形で日本親会社に還流するというやり方は?
  • 増資の前に他の株主をキャッシュアウトして、しかるのち増資する、といったやり方は?
といった疑問がある。ともあれ、上告受理申立中のようである(この資料の16頁)。先例との関係では、東京高判平成22・12・15に続くもの。

なお、受贈益が誰からやってきたかについては、子会社からと構成しても、他の株主からと構成しても、その点では益金算入という結論は変わらないはず。

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