27 May 2016

国際課税版の「実像把握」が,アップされていた

政府税調のこのサイトである。丁寧にデータを積み上げて,ルクセンブルグやシンガポールなどのGNPでみた「小国」が直接投資・証券投資の導管として用いられる傾向が強まっていることを,説得的に示している。今後の租税政策を考えるうえで,不可欠の基礎資料となるであろう。

特に注目したいのが,このデータの32頁。日本企業の海外展開ということでいえば,リアルな経済活動のあるところに見合った形で拠点が置かれている。これが私の読み取りである。こういう実需に見合った企業経営の世界と,バーチャルなマネーの流れの世界とは,異なるということである。

また,日本からの投資が多いケイマン諸島の位置づけについても,その規範的評価については丁寧に考える必要がある。少なくとも,BVIと比べて規制がゆるやかであるという評価については,正直にいって違和感を禁じえない。

さらにいえば,中間会社を置くことに事業上のやむにやまれぬ理由がある場合もあることに留意しておくべきであろう。たとえば,日本への利益還流や,事業終了時のEXITなどが難しい国への進出にあたって,いったん安全な国に中間持株会社をおき,その中間持株会社の株を売ることで投下資本の回収をはかる,といった例などである。もちろん,これこそが,インドのVodafone事件や,最近のインドとモーリシャス条約の改定の背景にあるわけであるが。

おそらく,リアルな事業活動の世界と,脱税・資金洗浄まで含めた幽霊会社の跋扈する世界とを,きちんと文節化して議論できるかどうかが,水準を保った租税政策論ができるかどうかの分かれ目といえるのではないか。

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