26 December 2011

オデコ事件再論―東京高判昭和59・3・14行集35・3・231

姫路ロー・ジャーナル5号所収の佐藤直人論文は,オデコ事件の対象とした事業年度(1971年から1973年)ののち,1996年に海洋法条約を批准し「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定してから,オデコ事件をとりまく日本の法状態が変わったことを明らかにする。いまや,「国際慣習法に根拠を求めることなく,わが国が批准した条約と制定法を根拠として,大陸棚と新たに設けられた排他的経済水域において,天然資源の探査・開発を含む一定の事項について,法人税法その他の租税法令を適用できることになった」というのである。

天然資源探査のためのリグは,いまはこんな形をしているようだ。

22 December 2011

最判平成23・1・14民集65巻1号1頁(破産管財人の源泉徴収義務―弁護士報酬と退職手当等)

弁護士である破産管財人は,その報酬につき源泉徴収義務を負い,その報酬に係る源泉所得税の債権は財団債権にあたる。これに対し,退職手当等につき,源泉徴収義務を負わない。

この結論を導くにあたり,最高裁は,受給者と「特に密接な関係」にある支払者に源泉徴収義務を課したという理解を示している。一方で,破産管財人が自ら行った管財業務の対価として自らその支払をしてこれを受ける場合,「支払をする者」にあたる。他方で,破産管財人は,破産者が雇用していた労働者と間で「特に密接な関係」がないし,破産者から源泉徴収をすべき者としての地位を承継する法令上の根拠がないから,「支払をする者」にあたらない,というロジックである。

管財人が源泉徴収を負わないとなると,問題は,破産者本人が源泉徴収義務を負うかである。立法論として,管財人に源泉徴収義務を負わせる方向の改正には,スポンサーが存在するのだろうか。

05 December 2011

東京高判平成21・4・15(柔道整復師事件)

柔道整復師は「医業又は歯科医業を営む個人」にあたらないとして,社会保険診療報酬の概算経費控除を認めなかった。柔道整復師がどういう仕事であるかは,このリンク

問題とされた租税特別措置法26条は,その原型が昭和29年に設けられた。昭和39年12月税制調査会答申では不公平税制の例として廃止が提案された。朝日新聞昭和49年12月28日の論壇に,金子宏教授が「税理論にあわぬ無条件控除―医師優遇税制改正見送るな」という一文をよせている。