30 April 2010

坂野潤治・日本政治「失敗」の研究(講談社,2010)

「明治20年代の徳富蘇峰は10年前の福沢諭吉の思想から何も学ばす,大正3年の吉野作造は明治20年代の徳富の二大政党論を全く知らずに徳富を批判し,昭和33年の信夫清三郎氏は吉野作造の「民本主義」を徹底徹尾曲解して批判した。・・・それぞれの時点で日本の民主化につとめた人々が,自己に先行する民主主義者の努力に全く関心を払わなかったのである。」(43頁から引用)

16 April 2010

大阪地判平成21・1・30判例タイムズ1298・140

平成18年改正前の法人税法施行令134条の2(現72条の5に相当)が,法人税法65条による委任の範囲を逸脱しないとされた事例。上告審で係争中。

施行令のこの規定は,法人税法22条3項2号の規定内容の技術的・細目的事項を定めたものといえるか。令134条の2は,使用人賞与について,一律に損金算入時期を規律している。判決は,施行令のこの規定が,法22条3項2号の定める債務確定基準と異なる基準を意味する場合がありうることを認めている。例えば,債務の確定日と賞与の支給日がズレており,しかも,施行令によると支給日が基準とされるような場合である。にもかかわらず,判決は「法律において課税要件等の基本的事項を定めた趣旨を損なわない範囲において,課税の公平及び徴税の適正等の確保の見地から,これと異なる規律を設け,もって課税の明確性,統一性を計ることも,当該基本的事項についての技術的,細目的な定めとして,租税法律主義の要請に抵触せず,許容される場合がある」と判示し,結論において22条3項2号の規定内容の技術的・細目的事項にあたるとした。法律の定める枠内にとどまっているとみたわけである。

使用人賞与についていかなる場合に債務の確定があったとみるべきかは,法22条3項2号の解釈として必ずしも一義的に定まるものではないから,より明確なルールを設けておくことが望ましい。従って,一般論としていえば,令134条の2のようなルールを設けることは,必要なことといえよう。だが,法律の定めるところと異なる規範を定立している部分があれば,その部分については委任の範囲を超えているとみるのが,理屈の建て方としてはすっきりしているのではないか。

06 April 2010

永久信託増加の原因

Schanzenbach and Sitkoff論文に対する岡村教授のコメントが,何ともするどい(2009アメリカ法147頁)。相関関係と因果関係は違う。人が何をしたかと,何をしたかったかも,違う。さても,実証的な議論は,おもしろくも,むずかしい。

03 April 2010

東京高判平成21・5・20

譲渡所得か不動産所得か。余剰容積分の容積を利用させることの対価を個人が受け取った事案で,譲渡所得ではなく不動産所得にあたると判断した。連担建築物設計制度の下で当事者がどういう合意をするかによって権利の内容は異なってくるから,あくまでこの事例についての判断である。ただし,所得税法施行令79条1項所定の事由を限定列挙と解している点が興味深い。同令で譲渡所得とみなすことが平準化のためだとすると,事案の判断にあたっては,①平準化すべき経済実態を備えているか,②取得費や保有期間のルールがしっくり適用できるか,といった観点も重要。