21 June 2010

タックスヘイブン関係の新刊

TAX HAVENS: How Globalization Really Works (2010, Cornell Univ. Press)
Ronen Palan; Richard Murphy; Christian Chavagneux

これはoffshore financial centers(OFCs)がneo-liberal globalizationの枢軸になっているとして批判する陣営による書物。OECDのTIEA締結攻勢が生ぬるいと指摘。OFCsをsecrecy jurisdictionsと呼んで,多国籍企業に会計開示を義務付けるべきだという。戦線を同じくするNPOのサイトはこれ

19 June 2010

東京地判平成21・5・28(CFC税制と来料加工)

 香港子会社の主たる事業は卸売業か製造業か。それが問題だ。
 これが問題になるのは,CFC税制の適用除外要件を設定するにあたり,卸売業なら非関連者基準で,製造業なら所在地国基準で,というルールにしたからである。しかし,商社のような場合(卸売業や金融関係,運送関係)についてだけ,事業活動が国際的にならざるを得ないと想定するのは,現在のビジネス・モデルにそぐわないのではないか。現地で真正な事業活動を行いつつ,それが複数地域にまたがる場合について,法令の起草者はよりきめの細かい要件設定を行うべきであった。

05 June 2010

最判平成21・12・3判例時報2070・45(ガーンジー島事件)

この事件の係争年度は平成11年から14年までの期間であるが,States of Guernseyの次の公式サイトによると,2008年以降,かなりの変更がある。
http://www.gov.gg/ccm/navigation/income-tax/about-our-tax-system/

このように,世界に点在するオフショア法域は,環境変化にあわせて自らの税制を変更していく。このような動きを事前に察知し,機動的に国内立法に反映させるための体勢は,整っているのだろうか。日本国は最近,バミューダ(2010年2月署名),香港(同3月基本合意),ケイマン諸島(同5月基本合意)という具合に,日本国はオフショア法域との間で租税情報交換条約を締結してきてはいるものの,より広く,広範な継続的調査→国内立法による対応→種々のルートによる相手側法域との対話,といったプロセスの確立が課題である。Commonwealthの盟主として人的物的つながりの強い英国ほどの対応は望めないとしても,英国の対応から学べることは多そうだ。